浮間舟渡は危険なのか?荒川の水害リスクを正しく知ろう

ハザードマップ

JR埼京線の浮間舟渡駅。赤羽駅から各駅停車で2つ先の駅で、住所は東京都北区浮間。駅の東側は板橋区船渡であり、北区の浮間と板橋区の舟渡を組み合わせた駅名です。

浮間舟渡駅周辺で生活する上で、気にしておきたいのは水害のリスクです。住みたくない理由として、治安や埼京線の混雑を挙げている記事がありましたが、浮間舟渡は犯罪発生件数は少なく、事件に合う危険性は低い暮らしやすい街です。埼京線は確かに混雑しますが。

浮間地区は古くから水害に悩まされてきました。猛暑、豪雨と異常気象が続く中、水害のリスクをどう考えるべきなのでしょうか

浮間舟渡とは

浮間船渡の特徴

浮間は、荒川と新河岸川の二つの川に挟まれた地域です。地名の由来は、荒川に突き出た浮島のように見えたことから、「浮間」となったともいわれています。

OpenStreetMap

浮間舟渡駅前には「浮間公園」があります。公園の約40%を「浮間ヶ池」が占め、大きな水車が公園のシンボルです。春には水辺にチューリップの花が咲き誇り、風車とチューリップの風景はまるでオランダにいるかのようです。

浮間公園

女優の壇蜜さんが、『東京都北区赤羽』で有名な漫画家、清野とおると交際するきっかけになった公園でもあります。

浮間の歴史

昔から、荒川はたびたび氾濫し、浮間は水害に悩まされてきたと言います。洪水対策として、どの家も土を盛りその上に家を建て、多くの家が舟を持っていました。

かつて浮間には、荒川の渡船場があり、対岸の板橋区と行き来していました。渡船場は浮間村が運営し、船賃を収入の一つにしていたようです。サクラソウの名所として有名で、多くの人が訪れましたが、1928年に下流に浮間橋ができ渡船場はその役目を終えました。

浮間の渡船場跡

人の手により作られた「荒川放水路」

浮間の北側を流れる荒川の下流、別名「荒川放水路」は、人の手で作られた人工の川であることはご存知でしょうか。

明治43年の150万人の被災者を出した洪水をきっかけに、東京の下町を守るために事業はスタートし、昭和5年に上流から下流まで繋がり、通水されました。

2024年10月で、荒川放水路は放水から100周年を迎えます。荒川放水路はこの100年の間、一度も決壊することなく、人々の暮らしを守ってきました。完成後、徐々に市街化が進み、1985年の埼京線の開業とともに、浮間舟渡駅が設置されました。

土を持った家も今は見かけなくなりましたが、今の浮間があるのは、荒川放水路のおかげともいえるのです。

岩淵水門付近からの川口市方面の眺め。高層マンションなどが見られる

異常気象による水害リスクの高まり

水害時に浮間船渡はどうなる?

各自治体には自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域などを示したハザードマップでは、浮間地区はどのようになっているのでしょうか。

下図のハザードマップの左側が浮間地区です。荒川が氾濫した場合、浮間地区は全域が浸水します。浸水時には、2階の軒下まで、5.0mの浸水深が想定されており、命の危険に関わることから、高台への非難が呼びかけられています

参考:東京都北区「荒川が氾濫すると

荒川の氾濫の危険性は?

氾濫時には浮間地区全域が浸水するとはいえ、水害のリスクがなければ気にする必要はありません。荒川が氾濫する危険性は、どの程度あるのでしょうか。

2024年の夏も非常に暑いですが、地球温暖化に伴い、日本各地を襲う「猛暑」、「豪雨」など異常気象により、荒川による水害リスクは高まっています

令和元年の台風19号では、各地で川の決壊や氾濫を引き起こし、100人超の死者を出した災害となりました。台風19号は、東京にも上陸し、江戸川区では広域にわたり甚大な水害を引き起こしました。

この台風19号において、荒川は戦後3番目に高い推移を記録し、墨田川が氾濫する危険性から、12年ぶりに荒川の岩淵水門が閉鎖されました。

現在の岩淵水門

地球温暖化による荒川の水害リスク

東京は、人口流入、経済の発展に伴い、大規模な都市化が進み、流域の多くが市街化されたことで、自然遊水地が減少しました。雨量が大幅に増加した際に、一時的に水を貯め川の水位を下げる遊水地が減少したことで、短時間に多量の表流水が河川に流入するようになりました。

気象庁によると、時間⾬量50mmを超える短時間強⾬の発⽣件数は、40年前の約1.5倍に増えています。1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上など、より強度の強い雨の頻度も増加しています。

参考:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化

地球温暖化が進むことで、グリーンランドなど陸上の氷が解け、海に流れ出して海水の量が増加したり、海水が温まることで海水が膨張、海水面が徐々に上昇すると考えられます。

水面の上昇、短時間での豪雨、短時間に多量の表流水の河川への流入など、水害のリスクは高まっています。過去100年荒川の堤防の決壊は起こりませんでしたが、今後、荒川が氾濫しないとは断言できないのです。

国交省は荒川氾濫のドキュメンタリーを公開し、北区や江東区を始めとする各自治体は、荒川の堤防が決壊したときの浸水状況、避難場所をハザードマップとしてまとめています。国、各自治体も荒川の氾濫の危険性は、一定あると判断しているのです。

まとめ

浮間船渡駅のある浮間は、駅前に水辺と風車が美しい浮間公園があります。爽やかな風が吹き抜ける荒川の河川敷では、ランニングやサイクリングが楽しめます。

ただ、浮間は古来より水害に悩まされてきた地域であり、荒川放水路ができ、市街化が進んだものの、昨今の温暖化、豪雨などにより、荒川が決壊・氾濫するリスクは高まっていると言えるでしょう。

万が一の水害に備えて、災害に関する知識を身に着け、避難行動を計画しておくことが大切です。

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